予防歯科とは、「治療を行う必要がないように健康な口内環境を維持すること」を目的とした診療分野です。
近年では世界中で予防の重要性が強く認識されるようになり、治療技術においても目まぐるしい進展を遂げています。
予防歯科の進むスウェーデンと日本を比べて分かる予防歯科の重要性
歯科の予防先進国と言われているスウェーデンでは、国民の歯科検診受診率は90%以上と言われています。
同国では、それほどまでに歯の予防がQOL(生活の質)の向上に欠かせないものだと考えられているのです。
日本でも近年では徐々にお口の予防意識が浸透しつつありますが、国民の歯科検診受診率は2%程度に停滞しています。歯科検診の受診率は、将来に残せる歯の本数において劇的な差を生み出します。
たとえば、80歳の日本人の平均残存歯数(残っている歯の数)は6.8本という統計結果があるのに対して、75歳のスウェーデン人の平均残存歯数は19.5本となっています。加齢にともなって歯を失うことは『普通』なことではありません。
正しいお口のケア(予防管理)を継続することで、生涯を通じて自分の歯を残していくことは十分に可能なのです。
予防歯科を受診することで得られるメリットとは?
歯の予防には、主に次の3つのメリットがあります。
- 虫歯にかかるリスクを効果的に減らすことができる。
- 歯周病にかかるリスクを低減させることができる。
- 将来に残せる歯の本数が増えやすことができる。
年を重ねてもご自分の歯を使っていくためにも、日々のお口の健康管理をしっかり行うことが重要です。
こちらでは歯科医院での予防管理をはじめ、ご自宅での適切なケアについてご紹介いたします。
プロフェッショナルケアとセルフケア
当院の予防歯科では、歯科医院で行うプロフェッショナルケア(歯の専門家によるお口のクリーニング)を中心に行い、お口の中に蓄積した歯石やバイオフィルムを取り除くことで清潔な口内環境を整えます。また、必要に応じて適切なセルフケア(ご自宅でのケア)についてご提案し、良好な口内環境を維持するためのアドバイスをいたします。
歯科医院で行うプロフェッショナルケア
当院で行うプロフェッショナルケアでは、患者様のお口の環境を清潔に整えるため、歯科衛生士が専用の機械とペーストを使用してお口の中を徹底的に清掃(PMTC)いたします。
PMTCを行うことで、普段のブラッシングでは汚れを完璧に落としきれない奥歯や歯の裏側、また歯と歯の隙間などをキレイにして、虫歯や歯周病を予防することができます。
また、ご希望の患者様にはエアフローと呼ばれる機材を使用し、歯の表面へ微細なアミノ酸粒子を吹き付けることにより、コーヒー・紅茶、タバコなどによる着色汚れを落としていきます。
このように、PMTCでは歯の着色(黄ばみ)を落とす効果に加えて、口臭予防に対しても非常に高い効果があり、多くの患者様よりご好評をいただいている人気の診療メニューになっています。
自宅で行うセルフケア
歯科医院での歯のメンテナンスは「プロフェッショナルケア」と呼ばれますが、患者様自身がご自宅で行う予防管理のことは「セルフケア」と呼びます。
虫歯や歯周病からご自身の歯を守るもっとも基本的な方法は『プラークコントロール』です。プラークコントロールとは、ブラッシングなどによってお口の中の細菌量を調整し、お口の中を健康に維持するためのメンテナンス方法です。
適切なブラッシングを継続的に行えば、即効性がなくとも、長期的には必ず歯を長持ちさせることに繋がります。口腔衛生のプロである歯科衛生士のアドバイスをしっかりとご自宅で実践していただき、お口の健康を末永く守っていきましょう。
正しいブラッシングのポイント
- 歯ブラシの毛先を磨くポイントにしっかりとあてます。
- あまり力を入れすぎず、軽く磨きましょう。
- 歯ブラシは小刻みに動かします。
- 1ヶ所あたり10回~20回程度磨くことでキレイになっていきます。
良好な口内環境を維持するため、3~6ヵ月に1度は定期検診を受診しましょう
ここまでご紹介したとおり、生涯を通じて健康な歯を維持するためには歯科医院とご自宅両方での予防管理が重要となります。治療後の患者様は特に、良好な口内環境を保つためにも3~6ヵ月に1回の間隔で定期検診を受診されることをオススメいたします。歯科医院と患者様とで協力し、ご自身の歯を長く使っていくための予防に取り組んでいきましょう。
定期検診の具体的な内容
歯や歯茎、粘膜など口内の状態を確認します。もし気になる箇所があれば、相談してください。
治療した歯だけではなく、新たに悪くなっている歯はないかチェックします。虫歯は早期発見、早期治療が大切です。歯の隅々まで、念入りにチェックしていきます。
歯と歯茎の隙間に歯垢や歯石がたまる場所を「歯周ポケット」と呼びます。歯周病が進行すると、歯周ポケットはどんどん歯の根元に向かって深くなっていきます。歯茎の炎症や出血がないかを確認し、歯周ポケットの深さを測ることで、歯周病が進行していないかをチェックします。
それまで経過を観察していた部分があれば、患者さまから状態を伺いながら、チェックを行います。
歯磨きなどセルフケアでは取りきれなかった歯垢や歯石を除去します。歯垢や歯石が多い場合や、歯周病が進行している場合は、2~3回来院していただくこともあります。
現在の歯の状況についてご説明させていただき、改善が必要な点があれば、毎日の歯や歯茎のセルフケアの仕方についてアドバイスします。気になる点や心配な点などがあれば、お気軽にお尋ねください。
定期健診にかかる費用
日本には健康保険制度があり、諸外国に比べて歯科治療は比較的安く受診ができます。歯科検診も保険が適用できます。1回の検診でかかる費用は、歯の状態や必要な検査などにも関係しますが約3,000円〜4,000円くらいです。
1回のメンテナンスには、30〜60分程の時間がかかります。歯石や歯垢を除去する、歯のクリーニングはとても気持ちのよい処置です。痛みを伴うことはほぼありません。
こうした処置を年に3回、定期的に受診しても費用は年間9,000円~12,000円くらいです。しかし、ケアを怠って、虫歯を治療したり詰め物や抜歯が必要になった場合もっと多額の費用がかかってしまいます。
歯科検診を定期的に続けるほうが、虫歯治療をするよりも、断然お得だと思いませんか。