歯周病によって歯肉が下がっていたり、歯槽骨(歯の土台となる組織)が溶かされてしまっている場合、抜歯したのち入れ歯やインプラント治療によって噛む機能を回復するのが一般的とされています。
ただし、歯周病に侵された歯槽骨を作り直す『再生療法』によって、ご自身の歯を使い続けるという選択肢も残されています。
再生療法にはエムドゲイン法やGTR法、GBR法などがあり、症状によって治療法を使い分けます。
エムドゲイン再生療法
エムドゲイン再生療法とは、失われた歯根部の周りにタンパクの一種である「エムドゲインRゲル」を適用することによって、歯槽骨を再生する治療法です。
エムドゲインRゲルは豚の歯の生成に重要な働きをするタンパク質(エナメルタンパク)であり、スウェーデン ビオラ社で開発された薬剤です。
2005年時点で世界の39ヵ国におよぶ国々で使用されるようになっています。
日本国内においてもその治療効果と安全性が認められ、2002年に厚生労働省の認可を受けた治療法となっています。
エムドゲインによって骨が再生するメカニズム
エムドゲインRゲルとは、歯槽骨を再生する際に重要な役割を果たす特殊なタンパク質です。このタンパク質を歯周病によって溶かされた骨(歯槽骨)へ適用することで、生体は丈夫な歯を作ろうと錯覚します。そして、歯の周りにある骨が徐々に形成されていき、結果として歯周病が改善されるのです。
エムドゲインのメリット・デメリット
メリット
- 入れ歯やインプラントなどではなく、自分自身の歯を使い続けることができる
- 合併症を誘発するリスクが少ない
- 50~90%の骨を再生することができ、歯周ポケットを浅くすることができる
デメリット
- どのような症状においても適用できるわけではない
- すべての骨を再生できるわけではなく、再生できる量は人によって差がある
- 骨の再生にはある程度の時間が必要
- GTR法(組織再生誘導)
GTR法とは、歯周病などによって歯肉や歯根膜、歯槽骨などの歯周組織が破壊されたとき、その組織の再生を図る治療法です。
歯槽骨や歯根膜が不足している部分へ人工膜(メンブレン)を適用することで、数ヵ月で新しい歯槽骨と歯根膜が再生します(個人差あり)。
ただし、歯周組織の状態によっては、GTR(組織再生誘導)を行えない場合がございます。
- GBR法(骨誘導再生法)
GBR法とは、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)の再生を図る治療法です。歯槽骨が不足していると、インプラント治療などを行う際に骨の幅や高さが足りず、インプラントの一部が骨の外側に露出するなどの問題が発生します。
歯槽骨の不足には先天性である場合もありますが、主な原因は歯周病や歯の喪失、また自分に合っていない入れ歯を使用することによって起こります。
GBR法では、インプラントの露出が予想される箇所にメンブレンと呼ばれる人工膜を覆いかぶせることで骨の再生を促します。
- FGG(遊離歯肉移植術)
歯茎の表面は「上皮」内側は「結合組織」とで構成されています。FGGは、歯茎の足りない部分に別の場所からとった上皮を移植する手術のことをいいます。
患者様の上あごの部分から上皮を切り取り、歯茎の足りない部分に移植します。
歯茎の歯肉が不足していると弊害が起こるので予防する目的で行われます。
FGGは、歯肉の表面の上皮を移植するため、移植した歯肉と元々の歯肉の色味の違いが出ますが、後述する上皮と結合組織を移植する手術「CTG(結合組織移植術)」と比較すると簡単な治療法です。
- CTG(結合組織移植術)
CTG(結合組織移植術)は下がった歯茎を増やす治療です歯周病や加齢、歯ぎしりなどによって、歯茎が健康な状態よりも下がっていると、歯や歯茎のトラブルが起こりやすくなります。
またインプラント治療を行う場合、リスクを減らすため、事前に歯茎を増やす手術を行うことがあります。FGGの項でもご説明しましたが、表面は「上皮」、内側は「結合組織」で歯茎は構成されています。
CTGはFGGと同じく、歯茎の足りない部分に移植を行う外科手術のことをいうのですが、FGGと違うのは上あごから、上皮ではなく「結合組織」だけを切り取り、足りない部分に移植します。
CTGは、FGGと比べ、技術が必要なのですが、歯茎の表面の色に左右されないので、見た目が自然な仕上がりとなり、審美性が非常に高いのが特徴です。