虫歯や歯周病が重度化して抜歯を余儀なくされた場合、その後は入れ歯やブリッジ、インプラント治療などの選択肢があります。
入れ歯やブリッジは保険適用のものもありますが、インプラントは高額医療です。
また、多くの方はできるだけ自分の歯を残したいと思っているでしょう。自分の天然の歯を使い、かつ機能を回復する方法に『自家歯牙移植』があります。
自家歯牙移植では、歯の抜けた場所に自身の余っている歯(親知らずなど)を移植し、天然歯の再利用を図ります。
抜いた親知らずを移植して再利用する『自家歯牙移植』
抜歯処置を行った自分の歯(ドナー歯)は、歯を失った部分へと移植することで再利用できる可能性があります。
この処置のことを自家歯牙移植(じかしがいしょく)といいます。
ドナー歯の移植が上手くいけば、周囲の歯と同じ働きを持つようになるため、今までのご自分の歯と同じように使っていくことができます。
自家歯牙移植のメリット・デメリット
メリット
- 自分の歯として機能する
- ブリッジや義歯のように隣の歯に負担をかけない
デメリット
- 適応症が制限される
- 親知らず歯の抜歯のため腫れが出ることもある
- 必ず成功するとは限らない
- 成功したとしても何年機能できるか予後が不明である
自家歯牙移植が可能となる条件とは?
自家歯牙移植を行うためには、次のような条件を満たす必要があります。
- ・ドナー歯を保存していること
- ・ドナー歯と、移植する部分の大きさが合っていること
- ・ドナー歯が健康な状態であること
- ・患者様の年齢が40代以前であれば成功率が高まる
事故などによって前歯が抜けた・折れた患者様へ
自転車の転倒事故やスポーツの最中、また遊具からの落下などで前歯が折れてしまった(あるいは抜けてしまった)場合は、早急に当院までご来院ください。
条件がよければ、歯を骨につけることで抜けた歯が元に戻ったり、根元から折れてしまっている場合も抜かずに済む場合があります。
早期に治療を行うほど、元通りにできる可能性が高くなります。
また、以下の点を守っていただくことで治療の成功率を高めることができます。
- ・折れた歯を歯の保存液、もしくは自分のお口の中に入れて持ってくる
- ・保存液が無い場合は、元の歯の場所に差し込んでおくのも1つの手段
- ・折れた歯の根元は、絶対に手で持ったり、水で洗わない
※再生するための組織が死んでしまうため
「自分の歯を残したい」という願いをかなえる歯牙移植
たかが歯1本と思われる患者様もいらっしゃるかもしれませんが、歯医者の立場に立つと歯が1本欠けることは非常に不幸なことです。前歯ならまず見た目が悪くなりますし、噛み合わせ、首や肩の筋肉、消化不良、噛む力、血集中力など様々な悪影響が及びますし、虫歯や歯周病を発症しやすくなります。
歯は1本1本がそれぞれ役割を果たしており、決してあなどってはいけません。歯牙移植にはいくつかの条件はありますが、歯を失ってしまった場合は可能なら歯牙移植を検討していただきたいです、歯牙移植は、ブリッジ治療のように抜けた歯の周囲の歯を削らなくていいですし、インプラントのように骨に人工物の土台を埋め込む必要もありません。
ご自身の歯と組織を再生させて修復させます。歯牙移植は、適応する移植用の歯を使いますが、他人の歯ではなく、自分の歯を使うので親知らずや骨に埋まってしまった埋伏歯をどこかから歯を抜いてこなくてはなりません。歯根には歯根膜という組織があります。
歯根と骨をつなぐ薄い膜である歯根膜は歯と骨をしっかり結びつけるともに、噛むときの力を和らげるクッションのような役割もしています。また、咀嚼した食べ物の固さを感じて、脳に伝える働きもあります。入れ歯やインプラントは歯根膜の役割を果たすことができません。
歯牙移植なら、歯根膜を活用し、インプラントや入れ歯にはない安定感が得られます。天然の歯とほとんど変わらないと言われるインプラントですが、どうしても天然の歯にはかないません。歯を移植した後は、半年程度で安定しご自身の歯としてしっかり噛むことができます。
歯牙移植した歯は天然の歯ですから、他の歯と同じようにケアを怠ると虫歯にもなります。
今までと同じようにしっかりとケアをし続けることが大事になります。